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【書籍紹介】『家庭で作れる東西南北の伝統インド料理』(香取薫)


「インド料理」と一口に語ることはできない広大な国、インド。インドは一つの国として成立しているが、ヨーロッパのようにたくさんの国が集合したものだと考えた方が良いのかもしれない。気候も歴史的背景も多様なインドのなかで唯一の共通点が「スパイスを使って料理をする」ということ。多様の中の統一。


インド亜大陸料理の細分化が進んできている昨今の状況を踏まえてなのかどうなのかはわからないが、この本に従えばガチの伝統インド料理を家庭で楽しめるようになる。インド料理のことをある程度知っている人にも、初心者にもきっと勉強になる本。

どんな本

  • 「スタジオペイズリー」主催、インド料理研究家、香取薫先生の新刊レシピ本。解像度が上がりつつあるインド亜大陸現地料理への世の関心に対する、大御所のアンサー。
  • 「家庭で作れる」と銘打っておきながら所々マニアックな材料や調理法が登場する容赦のなさが良い
  • インド料理を大まかに東西南北の4つに分け、それぞれの食文化的背景や地理的背景やよく使う油、料理の特徴などを解説した上でレシピをいくつかピックアップし、詳細に解説。
  • いわゆる「カレー」以外にもパンやチャトニー、デザートや飲み物などを多数掲載。
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インド料理を作って仮想的な旅に出よう

そろそろ自由に旅ができる状況が戻ってきているとはいえ、コロナによっておいそれとインドに行けなくなってしまった影響なのか、インド現地を仮想的に旅ができるようなコンテンツが流行っている。流行っているよね?少なくとも自分の周りでは流行っているように思える。


以前紹介したアジアハンター小林さんの著作『食べ歩くインド』もそんな本で、インド現地のレストランや食堂を丹念に食べ歩いた記録であるが、食文化の詳細な解説も含んでおり辞書的にも使える貴重な書物である。


今回紹介する『東西南北の伝統インド料理』であるが、表紙はなんとオディシャ料理。オディシャ料理といえば先月6月に日本で初めてかつ唯一の専門店が名古屋にオープンしたばかり。

なぜマイナーなオディシャ料理(旧:オリッサ)なのかというと、著者がインドのボランティア活動に参加した初めてのインドがオディシャ州だったというのも理由の一つとしてはありそう。
→オディシャ料理のnoteはこちら

マスタードと甘味、厳格な菜食寺院料理が入り交じるオディシャ料理とは。【東京マサラ部活動レポート】|カレー哲学|東京マサラ部
どうも、カレーシェアハウス【東京マサラ部室】を拠点に活動し、インド亜大陸料理の情報を発信し続け日本にインドを作り上げることを企む秘密結社、東京マサラ部です。怪しいものではありません。東京マサラ部では活動において毎月のテーマを決めながらインド亜大陸料理を作り、動かない旅を続けています。旅の模様はこちらのマガジンにまとめて...


本書ではタイトル通り東・西・南・北の順番に料理の概要や特徴を紹介した後、それぞれの代表的なレシピを紹介している。材料を入手するのは多少困難かもしれないが、この本のレシピに沿って丹念に作ることで仮想的なインドの旅ができる。

掲載レシピの一例

掲載されているレシピの一例をご紹介する。

ベンガル地方を中心とする東からは定番の「鯉のカレー」、表紙を飾っている「ダールマ」、パニールのケーキ「チェナーポダ」など。チェナーポダは牛乳のタンパク質を凝固させて作るカッテージチーズのチーズケーキで、チーズケーキ好きならばハマる美味しさがある。チェナーポダはマサラ部室でこっそりと作っていたのだがこの本によってメジャーデビューしてしまった感があって少し寂しい。

鯉のカレー
オディシャ料理ダールマ


西インドからはお馴染み「ポーク・ヴィンダールー」「海老のダンサク」「バターミルク」などがエントリー。このバターミルクというものは酷暑期などにインドでよく飲まれているものであるが、可愛い名前とは裏腹に硫黄臭い岩塩や生姜やコリアンダーリーフが効いたなかなかパンチのあるしょっぱい謎汁である。

ポーク・ヴィンダールー
バタルミルク

それからポップな南インド。南インド料理に関してはすでに別の単著で紹介されていることもあり、チェティナード料理の正統が味わえるThe Bangalaのレシピを再現した「The Bangalaのウップチキン」や「チェティナードゥ・ラサム」、炭を燃やして蓋をしカレーに香りをつけるドゥンガルという技法が使われるハイデラバードのキーマカレーなどを中心に紹介。

ウップ・チキン
キーマ

北インドの章ではウッタラカンド州の山間部、ガルワール地方の料理も紹介。さらに珍しいところでは玉ねぎもニンニクも使わないパニールボールが入ったパンジャーブの「マラーイー・コーフターカレー」なども。

マラーイー・コーフター


最後の方にはグリーンチャトニー、トマトチャトニー、ラーエター、チャーエ、ラッシーのバリエーションも4種類ずつ掲載。同じ名前の料理でもこうやって簡単にバリエーションが出せるのがインド料理の良いところであり、難しいところでもある。しかし何にせよ、こうやって横並びで比較分析ができるのは大変面白い。

もちろんこの本に紹介されているのは広大なインド料理のほんの一部に過ぎない。
本書をきっかけにして多くの人が伝統インド料理の面白さに気づき、その果てることのない沼にハマっていくことを願います。

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迷ったら買い。


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