インド料理の基礎を身につけていく上でチキンカレーほど適しているものもなかなかないだろう。肉の手に入りやすさ、調理のしやすさ、嗜好性の高さなど、総合的にチキンカレーは作りやすいと思う。
前作と前々作のレシピ本はポップな装丁と字体であり、家庭の主婦や完全初心者に広く「スパイスカレー」を広めるための本という感じがした。対して今回は重厚な黒いレシピ本で、内容もチキンカレーに特化しているというマニアックさ。
どんな本か
- エリックサウス総料理長イナダシュンスケ氏の「チキンカレー」専門レシピ本。チキンカレーのレシピが21種類登場するが、前提として調理器具の選び方や玉ねぎトマトなどの基本の材料についても丁寧に解説があるので安心。
- カレーに関してはチキンカレーのみに照準を絞っているが、ライスや野菜の副菜のレシピも掲載あり。
- チキンカレーの種類は大きく分けて「ベーシックカレー」・「コッテリ系カレー」・「サラサラ系カレー」・「ドライ系カレー」の4つ。
- この本のレシピをまずは手当たり次第作っていくことでインド料理の基礎とカレーの主要パターンが身に付く。目指せカレーマスター。
なぜチキンカレーなのか?
本当にチキンカレーだけで一冊本ができるのか?という疑問を持たれた方もいるかもしれないが、それができてしまうのがインドカレーのすごいところである。
カレーのバリエーションは無限大。ほとんど同じ材料を使っているにも関わらず一つとして同じ味にならない。
あえて内容をチキンカレーだけに絞っているのはいくつかの理由がある。
- 味が纏まりやすく、日本人の趣味嗜好に合っている。
- 思い立ったら気軽に作れる上調理にかかる時間も短め。
- 手頃な価格で一年中安定して手に入りやすい。
作りやすくバリエーションも出しやすいので、カレー作りの練習にはもってこいというわけだ。
チキンカレーのレシピは無限大
この本のゴールは、読者を「カレーマスター」にすることにある。インド料理のチキンカレーにおける主要パターンをマスターすることで、やがては自由自在にスパイスを操り、思い通りにデザインしたカレーを作れるようになる。
掲載レシピは大きく9パートに分かれている。
- ベーシックチキンカレー
- バターチキンカレー
- サラサラスパイシーチキンカレー
- 濃厚こってりカレー
- ココナッツミルクベースチキンカレー
- 汁なし系チキンカレー
- 個性派チキンカレー
- ライスと野菜のサイドディッシュ
- チキンのビリヤニとプラオ
みんな大好きバターチキンカレーだけで「基本のバターチキン」「レモンクリームバターチキン」「スパイシーバターチキン」の3種類(チキンティッカマサラを加えるならば4種類)という充実っぷり。
「サラサラスパイシーチキンカレー」パートには南インドのラッサムをベースにした「チキンラッサム」やネパールのチキンカレーである「ククラコマス」など、お米と一緒に食べたいカレーが並ぶ。
「濃厚こってりカレー」は北インドの濃厚な「チキンコルマ」や玉ねぎが入るタイプのバターチキンカレーである「チキンティッカマサラ」など。これらはパンと一緒に食べると美味しい。
「ライスと野菜のサイドディッシュ」にはチキンカレー以外のスパイス料理もたくさん紹介されている。この本が一冊あれば無国籍なカレーディッシュが簡単にでき、今日から食卓が豊かになること間違いなし。
ここは日本なのだから、美味しいものはなんでも食べればいい。別に全てインド料理で揃えなくても、味噌汁、煮物、豆腐が並ぶような普段の日本の食卓のおかずとしてチキンペッパーフライがあっても別にいいと思うのだ。
カレーマスターに、俺はなる。
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