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食体験

【食体験】千葉県いすみ市にあるインド。「巡るインド」

東京からアクアラインをかっ飛ばして90分くらい。千葉県いすみ市にはインドがある。今回の旅で初めていすみ市を訪れたのだが、実はかつてヴィパッサナー瞑想で10日間修行したことのある茂原の近くだった。既視感。

車で走っていると気づくのだが、いすみ市に近づいていくと明らかに道路沿いの雰囲気やお店の並びが変わってくる。都市にこそ多様性があって、田舎の風景はどこも似ている。それまで例のお店の並び(ラーメンショップ、ラーメンショップ、カーディーラー、すき屋、洋服の青山、車屋、のような陳列)ばかりだった道路沿いに突如ちょっとオシャレっぽい個人店舗が現れだし、道路の舗装の色が変わる。

ちょっと調べてみたところいすみ市は移住者に異様な寛容な街で、移住専門誌の「住みたい田舎ランキング」で首都圏エリア総合1位を獲得。創業支援制度も充実し、自分で事を起こしていく面白い人が集まっているようだ。

海沿いの街として元々サーファーたちにも人気だったが、ヒッピーカルチャーに馴染みのある自然派の方も集まってきているみたい。言われてみれば、確かにゴアっぽい?


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インド的時間と空間、巡るインド

聳え立つ二階建て。二階席は異様に落ち着くソファ席になっている。

駐車場にはいきなり鶏が放し飼いになっており(ネットの中にだが)、車を出迎えてくれる。

近づくと餌をくれると思うのか、簡単に人間に近づいてくる。特にこいつらを絞めてビリヤニやカレーの材料にする、という趣旨のお店ではなく、大家さんの持ち物らしい。たまに大脱走して捕まえることもあるのだとか。



このお店のオーナーシェフである真更薫さんが出迎えてくれる。物腰が柔らかでとても丁寧。なんだろう、まるで時間が止まっているかのような、不思議な雰囲気を醸し出すインド色のお人である。

来店の際は一応お店のwebサイトから予約し、席を確保することをお勧めする。この時はゆっくりお話ししたいこともあり午前最後の回を予約していった。道が混んでいたので結果的にちょうど良い到着時間となった。

メニューは基本的にその日にあるベジミールスのみ。以前はバナナリーフでの提供だったが現在はカトリでの提供となっている。

ベジミールスにオプションのプロウンマサラもお願いし、ラッシーを飲みながらしばし待つ。


ラッシーはケーララの有名なお店のレシピを参考にされているらしい。フローラルな香りが漂う、上品なラッシーだった。



丁寧でおいしいミールス。

人柄が現れたような美しいミールスがきた。構成はベジサンバル、ラッサム、つるむらさきのクートゥ。

ポリヤルにはダビデの星というとてもとんがっている特殊な星の形をしたオクラ。

ガス炊きをしているというインディアゲートの香りがよく、しゃっきりと炊き上がっていた。ライスに各アイテムをぶっかけ食べていく。クートゥとオクラの粘りもありライスがよくまとまる。

サンバルはライスが進むミックスベジ仕様であり、シメにはキリリとしたラッサムとヨーグルトをよく混ぜていただく。ライスがどんどん進むのですぐにおかわりをしてしまった。

いつもあるわけではないらしいのだがプロウンマサラがとても美味しい。トマトベースで浅い玉ねぎの炒め方なので一口ではイタリアンのようにも感じる。しかし追いかけるように辛味と香りがやってきてここはインドだったと気づく。


ライスマネジメントに気をつけながらもあっという間に食べ終わる。


チャイを飲みにくる子供、牛糞燃料、バナナの木…。ここはインドなんか。

食後にチャーエをいただく。チャーエには4種のスパイス、すなわちジンジャー、カルダモン、クローブ、シナモンが使われている。

先ほどまで食べていたミールスを思い浮かべながら、チャイでホッと一息ついていると近所の子供がチャイを飲みにきた。今はちょうど夏休みだ。真更さんとは家族ぐるみで仲良しなのだという。


小学生の時からこんな美味しいチャイを飲めるのって大変に恵まれた英才教育だなと思いながら話を聞いていると、どうやら牛を飼っているらしい。しかも庭にバナナの木がある。何それインドか?と半信半疑ながら見に行ってみたら本当にあった。


台風で葉が傷ついてしまっているが本当にバナナの葉っぱがあった。週に一回程度は新しい葉っぱが出てくる。

真更さん曰く、牛は今は牧場で飼っているが以前は家の前に繋がれていて、お店の休憩時間に横でチャーェをしばくのが喜びだったという。

牛はいなかったけど牛糞燃料があった。和菓子の型にハメて固められており、コロコロとしていてお香のような軽さだ。

牛糞燃料はインドを旅していると家の壁にドーナツ状に張り付けて乾かされているのをよく目撃する。インド的には神様の乗り物である牛から産み出された聖なる炎であり、伝統的な料理現場では牛糞燃料のみを使って調理を行うこともあるとか。

ラージャスターンのダールバッティーというチャパティの記事を丸めたハードパンは牛糞を燃やした灰の中で焼いて火を通すのが正式なやり方というし、一度料理にも試してみたい。


試しに一つ燃やしてみる。チャッカマンを使うもなかなか火がつかない。どうやら厚みがありすぎると難しいらしい。それでも火をかざし続けると一筋の煙が立ち、干草が燃えるような、夏の終わりによく似合う香りが立つ。これが牛糞だとは思えない。高円寺あたりの界隈で脱法の怪しい草などを混ぜて作られた洒脱なお香のようだ。


大人たちはどうすれば燃えやすい牛糞燃料が作れるのか、顔を寄せ合ってずっと真剣に語り合っていた。

小学生がYouTubeで牛糞燃料について検索し、インドの片田舎の村の風景が映し出される。藁を大量に混ぜ込み、薄い円盤状に作っている。確かにこの方が燃えやすいに違いない。今や誰が大人で誰が子供なのか、誰にもわからなかった。


いすみにインドは確かにあった。



お店の情報

店舗情報は直接お店のSNSなどでの確認をお願いいたします。

南印度料理 巡るインド
巡るインドは南印度料理店です。自然豊かな田園の中で本格南インド料理をお楽しみいただけます。
巡るインド (長者町/インド料理)
★★★☆☆3.43■予算(昼):¥1,000~¥1,999

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