「我孫子」という漢字は初見では絶対「あびこ」とは読めないが、我孫子という駅から歩いて15分ほどの住宅街にそのお店はあった。パッと見はただの民家なのだが、近づいてよく見てみると「西インドグジャラート料理」、「おいしいチャパーティーあります」と書いてある。期待が高まる。
グジャラートは西インドの州で、ベジタリアン料理が充実している禁酒州だ。ベジタリアンと聞くと精進料理のように禁欲的な食事を連想してしまうかもしれないが、豊かな食文化のある土地だ。生マンゴーを干して粉にしたアムチュールと呼ばれるスパイスで甘酸っぱく味付けした料理が多く、グジャラートの料理を盛り合わせたターリーは甘い料理がたくさんあることでも有名だ。farsanと呼ばれる、グジャラート発祥のスナックも充実している。
武田ワーラーさんによる巨大なガネーシャの絵も壁に。
営業日はFacecookを通して発表され、基本的に木曜か土曜になる。事前に予約するとグジャラート料理を満載したターリーが食べられるため、この時はインドネシアからの帰国時に成田から直接向かった。
すごいターリーが来た。
小麦や雑穀類もよく食べられていて、この時はパンだけでも3種類あった。Phulka Roti(直火焼きしたチャパティ)やThepla(雑穀やフェヌグリークの苗、スパイス類を混ぜてヨーグルトで捏ねて焼いた薄焼きパン)に加えて、揚げパンのPuriが提供された。
カトリに入ったカレー的なものはグジャラートではshaakと呼ばれる。オイルでクミンやマスタードシードを基調としたスパイスを炒めて香り付けし、ヨーグルトベースのグレイビーに仕上げられることが多い。
写真の右下のカトリに入っているdhokdi nu shakはひよこ豆の粉(ベサン)にスパイスを混ぜて蒸し焼きにしたケーキ状のものをグレイビーに入れたカレー。
グジャラートのダールはKhatti Meethi dalと呼ばれ、甘酸っぱいのが特徴的だ。
日本ではなかなか食べられないBajra rotiも頼んでみた。bajraは英語でpearl millet、日本語ではトウジンビエと呼ばれるやつである。
キッチンで焼くところも見せてもらった。bajraは小麦粉などとは違いグルテンが生成されない粉なので生地を捏ねてもまとまらず、特別な技術と修練が必要とされる。
グジャラートなど西インドでは伝統的に食べられてきたが今の世代の若い人たちは10人に一人も作れないのではないかということだった。
熱湯を使って生地をディスク状にまとめ、水で濡らしながら指で掴むようにして伸ばし整形して、熱したタワで一気に焼き上げる。確かに伝統的な技術が要求される。綺麗に膨らんだ時は歓声が上がった。
焼き立てを焼きなすのカレーと一緒にいただく。bajra自体は小麦に比べてボソボソとした食感があり、そこまで美味しいものではないが、ずっしりとした食べ応えがある。
お子さんたちも出入りしており、インド人の子供と日本人の子供が仲良くチャパティを分け合っている光景も見られた。友達の家に遊びに行ったような感覚で伝統料理がいただける素晴らしい食体験だった。
お店の情報
営業日はFacebookで発表され、メッセージでの事前予約が必須。アクセスも遠いが、ぜひ一度体験してみてほしい料理だ。
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