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【食体験】Spice Gateの謎ターリー(十日市場)

日本の中にインドがあった。いや、時空間がネジ曲がってあそこの一箇所だけインドにワープしていたのかも知れない。以前から気になっていたお店にやっと訪問することができた。

お店と言っても、十日市場という駅にある(徒歩20分以上離れているが)団地の中のインド食材店である。表立っては何も宣伝していないのだが、おじさんに言うと謎のターリーを出してくれるという。

その場に行ってみるまで何が食べられるのか、本当に食べられるのかもわからない。メニューも価格表も特に存在しないようだ。まるでギャンブルじゃないか。

十日市場は初めて降りる駅だった。件の食材店まではさらに駅からバスに乗って10分程度。途中でルシ・インド・ビリヤニを通り過ぎる。ここも2020年にできたお店で行きたかったのだが、まずはスパイスゲートの方に行くことにする。

Spice Gateは団地の商店の並びに普通に佇んでいた。ぱっと見は普通の食材店だが、入ってみるとイートインができそうなテーブルがたくさんある。カウンターの中にはインド出身と思われるおじさんがおり、ちょうどインド人女性の接客をしていた。

「ランチ食べられますか?」と声をかけてみると接客しながら「チョットマッテ」と答えてくれる。どうやら食べられるらしい。

何が食べられるのですか?と聞くと「thali」とのこと。ターリー、というよりタリ、と短めに聞こえた。タリ、とは定食のことだが基本的に内容は選べない。インドの食堂などではこういうパターンが多かった。メニューは一種類しかなく、座ると自動的に出てくるので後は身を任せるだけだ。

お客さんが帰るとおじさんはカウンターの中で何やらごそごそし始め、何かを揚げるような音や何かを切る音が聞こえてくる。なんだかワクワクしてきた。

適当に店内をウロウロして品物を物色すると、最近あまりみかけないPillsburyのゴールドアタがあったり、地味に品ぞろえが良い。この団地に住んでいるインド系の人々の胃袋を支えているのだろう。

おじさんに話しかけてみる。どのくらい時間がかかるのか尋ねると、「ニジュップン」と言われた。

ということは一時間くらいは覚悟したほうがよいのだろうか。時間の流れが完全にインドである。あわよくばルシ・インド・ビリヤニにもはしごしようと思っていたのだがこの時点で諦めた。

前情報に頼って、計画通りに進む旅は楽しいだろうか。ガントチャートを組んでプロジェクトを管理するのは会社の仕事だけで十分だ。

メニューや価格が決まっていて、予めネットで評価が見られて、どんな味がするのかがだいたいわかり、自分の好みに合うだろうお店を予め選んで訪問する。それは冒険だろうか。否、そんなのはただの答え合わせだ。

ターリーの到着を待っている間、団地に住んでいると思われるインド人女性が立て続けにやってくる。話されているのはヒンディーだ。

そのたびにおじさんの調理の手が止まる。ああ、これはインドだ、と思い懐かしい気持ちになった。

注文から30分くらい経っただろうか。「オマタセシマシタ」と運ばれてきたターリーがこちらだ。

やけに甘いチキンカレーと素朴なダル、揚げたてのプリとなぜか米の山が2つ。

さらにヨーグルト、玉ねぎのアチャール、ラプスィー(ネパールでよく食べられている梅のような果物)のアチャール。スイーツもついてくる。

このプリがとにかく揚げたてでおいしい。米の山が2つあるのはなぜなのかわからないのだが、炭水化物に偏重することでおもてなしの気持ちを表しているのだろうか(謎)

あとからチキンカレーのグレイビーだけを出してくれた。めちゃめちゃ甘い。ガラムマサラ系のスパイスの香りはあまりせず、ボイルドオニオンのグレイビーに砂糖を加えた感じだろうか。不思議なカレーだった。


食べ終わって、お会計を頼むと代金は1150円。

すごくおいしいわけでもないし、別に安いわけでもないのだが、体験としてはとても唯一無二だった。時間の流れ方が違う場所に強制的に迷い込む感覚は、お金を払ってもなかなかできない。

会計のときに話しかけてみると、おじさんはインドではなくネパールの出身とのこと。言われてみればラプスィーだし、ターリーもなんとなくネパール感があった。

カウンターで売っていたサンバルオニオンをお土産に買って帰った。

ルシ・インド・ビリヤニにはやっぱり間に合わなかった。

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お店の情報

営業時間不明

ランチ提供時間不明

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