スポンサーリンク
カレー本書評

【書籍紹介】作ろう!南インドの定食『ミールス』

大森で「ケララの風」、「ケララの風Ⅱ」としてミールスを提供していた沼尻さんのレシピをまとめた同人誌。かつて食べ放題のミールスを提供していた「ケララの風」と「ケララの風Ⅱ」は今は「ケララの風モーニング」に代わり、ティファンを普及させることが活動の中心となっているため、ミールスの提供はイベントの際にしか行われていない。

沼尻さんの普段の調理はインドよろしく目分量で行われているため、計量して再現性のあるレシピとしてまとめられるのは初の試みとのこと。


どんな本か

  • フリーライターの玉置標本さんが企画編集。「ケララの風Ⅱ(現在はケララの風モーニング)」オーナーシェフ沼尻さんが作るミールスレシピをまとめた同人誌
  • 南インド料理虎の穴『ケララの風』ミールス教室の内容を本にまとめたもの
  • 同人誌とは思えない製本クオリティ
  • 品数は多いが一つ一つの調理は難しくない、ミールス各アイテム18の料理をレシピ化
  • ミールスの雑学講座やインド料理関係者による寄稿も充実
  • 随所におやじギャグが散りばめられている(これが製本の条件とのこと)


詳細・購入はこちらのリンクから。

スポンサーリンク

ミールス作りは難しくない

ミールスは南インド全般で日常的に食べられているセットミール、定食のこと。「南インド料理」と言う際に南インドとして数えられるのはアーンドラ・プラデーシュ、テランガーナ、カルナータカ、タミル・ナードゥ、ケーララの5州。

ミールスの語源は英語で食事を意味する「MEALS」。食事全体のことを漠然と総称した言葉がそのまま逆輸入されて入ってきてしまったようだ。

沼尻さんは約40年前商社マンとしてケーララ州に駐在し、そこで得た経験をもとに帰国後食事会を多数開催。2008年に大森に「ケララの風」をオープン。2011年に「ケララの風Ⅱ」と改名し食べ放題のミールス専門店にリニューアル。

今では「ケララの風モーニング」としてモーニング営業をしながらイドゥリ、ワダなどティファン類の提供がメインとなっている。


スパイスや豆類、カレーリーフなどのハーブはスーパーではなかなか買えないものも多いのだが、東京近郊では新大久保や西葛西、御徒町などのアジア系食材店に行くと手に入る。

材料を入手するところからミールス作りは始まっていると言えるが、逆に材料を一通り揃えてしまえばミールス作りは難しくない。

本書には基本的なミールスの構成要素のレシピとしてライスダールサンバル、ラッサム、トーレン、アチャール、パパダム、カードを掲載。

さらに発展編としてクートゥ、イステュ、アヴィヤル、ティーヤル、エリセリ、オーラン、パチャディ、カーランのレシピも載っている。

つまりこれを一冊抑えておけば、ミールスを構成する一通りのアイテムは作れるようになるのだ。

もちろん異国の慣れない料理なのですぐに完璧というわけにはいかないが、沼尻さん曰く「ミールスに正解はない」という。そこまで難しい調理法を求められるわけではないので、100回も作れば次第に洗練されていくことであろう。

ミールスの雑学講座

この本では、ミールスの各アイテムの具体的なレシピに加えて雑学的な内容も充実している。

その中でも特にマサラワーラー鹿島さんとの対談の中でケーララ州の料理とタミル・ナードゥ州の料理を比較している「ミールスの多様性を語ろう!」の話が興味深い。

ケーララとタミルは隣同士の州にも関わらず料理の味付けがかなり違い、それぞれがそれぞれを貶し合っているような状況。「タミルの方が味がシャープ」で、「ケーララの方がホワッとしている」という表現がされている。

確かにタミル料理の方が全体的に味が濃くて、酸っぱくて、黒くて辛くてはっきりしている気がする。
対してケーララ料理はぼんやりとしてココナッツばかり使った料理が多い。

違いがはっきり現れているのがトーレンとポリヤル。

鹿島ワーラーによると、トーレンはマラヤーラム語(ケーララの言葉)で「炒めたもの」を意味し、ポリヤルもタミル語で「炒めたもの」を意味する。

語源的にも同じ意味にも関わらずケーララとタミルでは味付けが違う。タミルのポリヤルはパンチのある炒め物でターメリックやチリパウダーを効かせる。それに対しトーレンはココナッツをたっぷり使うし辛味を入れると怒られるらしい。


こういう違いは長い時間をかけて形成されてきたもので、宗教や地理、気候などに由来するのだと思う。ただ、大まかな傾向はあるにしても必ず例外があるのがインド料理で、わかるのは「言い切ったら負け」だということだけだ。

裏表紙には綺麗な沼尻さん


購入先はこちら

同人誌なので一般的な書店では購入できない。こちらのページから要確認。

スポンサーリンク
カレーの哲学.com

コメント