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カレーの用語辞典

ネパール東部で食べられているコケ、ジャウとは

先日、NHKのカレー特番「スパイス香る!カレー聖地巡礼〜リモート大作戦〜」を観たのだが、思ったよりガチでビビった。自由に海外にいけない状況が続いている中で、海外を感じられるものが以前に比べて強く求められているのだろう。

自分はリアルタイムで観られず後からオンデマンド配信で視聴したのだが、実際に観る前にTwitterなどで「ブングルコマスとジャウ」「コケのカレーが気になる!」「ネパールのコケが!!」という発言を頻繁に見かけてとても気にかかっていた。

だから、ちょっと調べてみた。

この記事を読むと、ネパール東部で食べられているコケ(正確には植物ではなく菌類なのだが)、 jyau(झ्याउ) ジャウについて少し詳しくなれます。


番組の概要

今回の番組は、カレーと言う文脈ではあったもののスリランカ、南インド、ネパールの現地料理をリモートで取材したものを実際に日本で作ってみてゲストに食べてもらうという、旅感や現地感、ユニーク感が強めの企画だった。

登場したシェフは2020年に出たこの本の日本人シェフ3人組。どれもいわゆる「現地系」料理を出すお店である。

神戸スリランカ料理カラピンチャの濱田さん、京都タルカの小此木さん、大阪でダルバート食堂を開店した後東京にOLD NEPAL TOKYOをオープンした本田さん。(OLD NEPALのレポはこちら)

Bitly


番組のネタバレをすると、今回は3つの国と地域それぞれにリモート取材を敢行し、現地で作られた料理を日本で再現してみるという趣旨。空間を飛び越えたどこでもドア的なカレー企画とも言える。


スリランカでは料理研究で博士号を与えられたという伝説のシェフ、ドクターパブリスが登場。ホールではなくパウダースパイスを煎る意外性がポイントというややマニアックな展開で、若干インパクトが弱かったように思えました。。カジキのカレーと一緒に供されたポルサンボルやパリップに関しては特に言及がなかった。


南インド、マドゥライのパートではいきなりヤギを解体しはじめ、レバーを使った家庭料理の炒め物エラルチュッカと、残りのヤギ肉でヒンドゥー式(炊き込み)ビリヤニを作っていた。肉も新鮮だし、スパイスも2ヶ月にいっぺんそのつど臼で挽いたりするそうで、時間をかけて作られた豊かな家庭料理おいしそう。


ネパール編では東部のライ・リンブー族の取材で、ジャウというコケ(正確には地衣類らしい)をスパイスのひとつとして使う豚のカレー、ブングルコマスを紹介していた。ジャウは「炭でバーベキューした後の帰ってきた服のニオイ」でめちゃくちゃ苦いらしい。

番組内の独自評価基準によって優勝となったのはこのネパールの料理だったのだが、わざわざ木に登ってまでとってきて、苦味を取り除くために長時間をかけて大変な下処理をしてまで食べるこのジャウというスパイスはそんなに魅力的なのだろうか。っていうか、そもそもこれってなんなんだ。ちょっと調べてみた。

jyau(झ्याउ) とは

jyau(झ्याउ) ジャウはリンブー族の別名でYangbenともいい、ネパール東部の丘陵地帯でしか手に入らないようだ。これは生物学的には地衣類に分類されるもの。地衣類は藻類と共生している菌類で、コケに似ているが植物ではない。

edible moss
https://www.thegundruk.com/yangben-wild-edible-lichen/ より

ネパールは多民族国家で、食べているものや文化も民族によって異なる。このジャウは東ネパールのモンゴロイド系のライ族やリンブー族のコミュニティで食べられているもので、他の地域では手に入らないらしい。カトマンズのナキポット地区や、ライ族やリンブ族が多く住むダランなどの都市などでは肉屋で売られていることがあるとか。キネマ(納豆)や酒と同様に、ネパールにおける地衣類の食生活の歴史は、現在の中国南方の雲南地方に起源を持つという説があるようだ。

番組でも紹介されていたが、ジャウ(ヤンベン)を食べるのにはとっても手間がかかる。

①栗やハンノキの老木の枝に寄生しているものを集める(だから木に登っていたらしい)
②樹皮や他の植物などのゴミを取り除く
③灰を混ぜ込み、3〜4時間煮込む。その間に色が茶色に変わり、柔らかくなる
④乾燥させて保存する。

豚肉や内蔵、血を使って料理をするのが一番おいしいらしい。ヤンベンを使うことで。豚の脂肪分を吸収して深い土の香りがし、独特のうまみがある料理となるようだ。

こちらのサイトでは写真付きでヤンベンを使ったポークカレー、ヤンベンファクサのレシピが載っていたのでご参照されたい。まあ、肝心のヤンベンが手に入らないのでどうしようもないですが。

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こちらもYangben Faksaのレシピ動画。



日本では流石に入手不可能なため香りがわからないが、南インドや西インドでよく使われるカルパシ(kalpasio、ブラックストーンフラワー)も地衣類。華やかではなく、煙のような地味な香りなのだが、スパイスを極めていくと最終的にそういう香りに行き着くのだろうか。

参照リンク:

Yangben: The wild delicacy of the Limbus
HowtheyangbenbecamecrucialtoLimbucuisineandhowyoucanmakeitathome.


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コメント

  1. 匿名 より:

    美味そう

  2. 匿名 より:

    美味そう
    今日食べたい