西インド料理とは
「インド料理」として漠然とくくられていたものの中にも実は北インド料理と南インド料理がある、ということが最近知られてきている。日本のインド料理の概念の解像度が上がっているのだ。しかし、「西インド料理」と言われてもあまりピンと来ないという人は多いのではないだろうか。
西インドはインドの西側の州、ラジャスターン、グジャラート、マハラシュトラ、ゴアを指すことが多い。ゴアはかなり特殊な歴史を持っているので料理も独自に発展していて、南インドにもカウントされることもある。
西インド料理に関して調べていると、実は南インドのみそ汁的な料理であるサンバルのルーツが西インドにあったり、南インドでよく使うイメージのあるカレーリーフが頻繁に使われていたりと意外な事実に気づく。境界線というものは地図上で便宜的に引かれたものに過ぎず、文化というものはグラデーションで広がっているということに気付かされる。
西インド料理はかなりバリエーションがあるが、その中でもいまはマハラシュトラ料理に着目している。
マハラシュトラ州と言われてもあまりわからないかもしれないが、州都ムンバイ(旧ボンベイ)やエローラ石窟群、アジャンタ石窟群の名前は聞いたことがあるのではないだろうか。
なぜ着目しているかというと、地図でみてもわかるようにかなりエリアが広く、その分だけバラエティ豊かだからである。更にムンバイは人口1000万以上を抱える経済都市であり、国際色豊かな文化が形成されている。インドとは思えないようなおしゃれな街も広がっており、外国の食文化も柔軟に取り入れていれる土壌があり、屋台料理なども面白い。
2月の予約制マハラシュトラターリーベジ・ノンベジ
お店のメニューブックにもマハラシュトラ料理の説明が書いてあったのでそのまま引用。
プリヤマハル東京で提供する料理は、インドのマハラシュトラ州の周辺で食されている料理です。
地理的にインドの東西南北をつなぐ交通の要衝に位置するマハラシュトラ州の料理は、東西南北インドの多くの地方料理の伝統を併せ持ちます。もちろん風土に根ざした独自性もあり、州とムンバイからゴアに至る西側の海岸線にはコンカン料理と呼ばれる海産物料理の文化が生まれ、プネから内陸の古都ナグプールへと至るデカン高原の街道沿いには、暑すぎない気候がもたらす豊富な野菜やマンゴーなどの果物、乳製品を使う種々の料理が作られています。当店の料理は、州都ムンバイ周辺の主にマラティ語を話す人々に伝わる郷土料理(Mratha Food)です。商都でもあるムンバイで発展した料理は、忙しい商人が気軽に済ませられるストリートフードや、カジュアルでありながらも幅広い種類を楽しめられる食事が知られ、当店でもその一部を提供しています。
そんなこんなで笹塚のプリヤマハル東京に再訪。
ここは月替り予約制ターリーとしてマハラシュトラの様々な地域の料理を提供しており、何度か訪問したのだがその度に新しい発見がある。
2月のターリーはノンベジは東部ヴィダルバの料理、ベジは”芋”がテーマとのこと。
ベジタリアン・ターリ:芋の力を満喫して冬を乗り切るターリ
全体的に炭水化物多め。メインがイモ類であるのに加えて米料理のプラオもムンバイパンもおまけについてきてしまう。さらにデザートも。
ベジにもノンベジにも含まれるのがKoshimbil コシンビル・サラダ。煎りピーナッツがアクセントとなる、キュウリや人参などの野菜が細かく刻んで和えられたサラダ。マハラシュトラ全体で広く食べられていて、ヨーグルトが入ったり別の野菜が入ったりと色々なバリエーションがある。
プラオはかなりパラパラだった。味わいはスパイスがあっさり香る程度で塩気は薄く、単体で食べるよりも他のものと一緒に食べるための米料理。
本日の白眉は、Ragda Pattice ラグダパティス。マッシュしたじゃが芋の「お焼き」にダルをかけたシチュー状のもので、優しいのに旨みたっぷり。パンに挟んで食べるストリートフードらしいのでそれにならって食べてみたが、パンが小さいので食べにくい。
北インドの冬の定番料理Dum Albiダムアルビは、トマトベースのソースに里芋が入ったカレー。グレイビーがにんにく、うまみたっぷりに仕上げてあって、里芋がなくても十分においしいのだが、里芋が入ることで相乗効果で更にうまくなる不思議。
Ratalyacha Kheesラタリャチャキーズは玉ねぎやにんにく、雑考を摂取できない断食の禁則食下で食べる一品だという。ヒンドゥーの民は断食の際、腹は膨れるけど栄養がないからタピオカやさつまいもを食べたりするらしい。細長くシュレッドされたさつまいもはほんのり甘い。
ヨーグルト系のものが二つ皿の上に乗っている。Chaasは食前に飲むための薄いヨーグルトドリンクのバターミルク。Raitaは、酸味と甘味があり、野菜が入っている。プラオにかけながら食べるといい感じ。
デザートのShevya Kheelは麺がたくさん入った濃厚なキール。濃厚も濃厚で、喉が渇く甘さ。インドスイーツはこうでないと。
ノンベジタリアン・ターリ:マハラシュトラ東部Vidarbhaの料理
ノンベジの方はコシンビルサラダ、デザートのキールは共通でのっている。
スターターにはムンバイの海老天、プローンコリワダ。日本の海老天の方が好きだけど、ひよこ豆の粉で包まれたもったりとしたエビパコラも悪くない。
チキンカレーはカルダチキン。マハラシュトラ東部Vidarbha(ナグプールやアムラヴァティ)のドライチキンカレー。ガツンと来る味。炒め玉ねぎとにんにく、コリアンダーリーフが粉砕されていて、メティが香ばしく香っている。このまえギャルがこういうの作っていた。東の方の内陸の料理なので、ムンバイやプネーとはまた違う雰囲気がある。
マトンカレーはワルハディマトンココナツとスパイスの効いたソースの絡まったマトンだが、油の滲み出す感じに現地の風を感じた。
ノンベジのプレートにはチャパティがつくのだが、これがしっとり系でおいしかった。マハラシュトラではチャパティをPoliと呼ぶらしい。
ムンバイはストリートフードが充実している。食後に追加でいくつか軽食を頼んでしまった。デブまっしぐら。
Misal Pav
豆でつくったカレー、Usalにスパイスを足してトッピングを加えるとそれはMisalになる。インドでたべたMisalはもっと汁っぽくて辛かったのだが、これはインドで食べたMisalとは全く違うテクスチャーで、緑豆がよく煮込まれてほろほろになっていた。
Amti
Amtiは南インドに伝わってサンバルのルーツになったという豆の料理。コカムで酸味をつけているという話だったが、こちらはそれほど酸味は強くなかった。
デザートも充実しており、カルダモンの効いた濃厚なヨーグルトシュリッカンドShrikhandや濃ゆいマンゴーシェイクのマンゴーマスタニMango mastaniなど、実力派が勢揃いしていた。
こちらもお試しあれ。
ムンバイ在住のインド人オーナーへのインタビューをまとめた記事はこちら。
お店の情報
定休日:水曜日
テレワーク用のワーキングスペースとしての利用など、面白い取り組みも盛んにされています。
詳しい情報はご自身でご確認ください。
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