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カレーについて考えるコラム

発酵玉ねぎと発酵トマトでカレーを作ってみた

前回の続き。

3%の塩分で発酵玉ねぎと発酵トマトをそれぞれ仕込み、日ほどが経った。初回は失敗してしまったのだが今回は腐ったような臭いもせず、食べるとほんのり酸っぱい。水は白く濁り、シュワシュワとした生命の息吹を感じる。この中に乳酸菌がたくさんいるのだろう。

発酵させた食材は旨味がブーストされるのだろうか?また、調理の過程ではどう変化するのだろうか?気になったので、以下4パターンで分量と調理法を揃えつつ、基本的なレシピのチキンカレーを作り、比べてみた。


発酵材料でカレーを作る

作り方は以下のようなシンプルなチキンカレーのレシピで、玉ねぎとトマトの部分は普通のものと水を切った発酵のものの2種類を同量ずつ用意し、4パターンを試した。

【レシピ】
・大さじ3の太白ごま油を熱し、小さじ1のクミンシードを加熱。
・玉ねぎのみじん切りを加え強火で加熱。
・ニンニク生姜のすり下ろしと水100ccを加え、水分を飛ばす。
・みじん切りのトマトを加え、水分が飛ぶまで炒める。
・弱火にし、ターメリックパウダー小1、コリアンダーパウダー小2、チリパウダー小1、普通の玉ねぎを使った方は塩小1を加える。
・香りが立ったら鶏肉(手羽元、胸、ももミックス)300gを加えて、表面が白くなるまで炒めたら水300ccを加えて煮込み、沸騰したら蓋をして弱火で40分煮込む。
・仕上がる直前にコリアンダーリーフのみじん切り50ccと青唐辛子の小口切り1本を加えた。


この作り方で

①普通玉ねぎ×普通のトマト
②発酵玉ねぎ×普通のトマト
③普通玉ねぎ×発酵トマト
④発酵玉ねぎ×発酵トマト

の4種類のチキンカレーを作った(実際は2日に分けて2種類ずつだが)。


玉ねぎの脱水

全ての材料を同時に加熱したつもりだったが、使っているフライパンの形状や材質が異なるため条件が揃っているとは言えない。まあそこは一旦大目に見るとして玉ねぎの火の通り方について考えてみると、明らかに差があった。

左が発酵玉ねぎ、右が普通の玉ねぎ

加熱し初めて約10分時点の玉ねぎの様子だが、発酵玉ねぎの方が水分の抜けが早く、フライドオニオンにも似たような乾燥度合いになっているのに対し普通の玉ねぎは水分量が多く、なんだかボッテリとした感じになっている。

ちょうど直近の水野さんのnoteでも同じような実験がなされていた。脱水目的の場合、加熱する30分以上前に玉ねぎに塩を混ぜておくと意味があるが、炒めるときに玉ねぎと一緒に塩を入れてもあまり意味がなさそうという結論になっていた。

147.玉ねぎと塩でカレーソースはどう変わるのか? 問題|水野仁輔
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発酵玉ねぎの場合は明らかに普通の玉ねぎより火の通るスピードが早かったのだが、多分これは発酵させたときに塩水につけたので、浸透圧により玉ねぎの組織中の水分が奪われていたことが要因だろう。
早く玉ねぎを飴色にしたいなら、塩につけておくことは一定の効果があると思われる。

発酵カレーの感想

①普通玉ねぎ×普通のトマトと②発酵玉ねぎ×普通のトマトの比較
出来上がったときの味は、
普通の玉ねぎの方は渋め、苦め、ミドル弱め
発酵玉ねぎはしょっぱい、旨味強め、香ばしめのような気がする。


発酵玉ねぎの方は追加で塩を入れなかったのだが、かなりしょっぱい。食べてみると旨味がブーストされているような。しかしこれは玉ねぎの火の通り具合によるものなのか、発酵により旨味成分が増えたのかは判別がつかない。

そしてそもそも同じ塩分濃度になっていないので、比較は意味をなさないのかもしれない。

③普通玉ねぎ×発酵トマトと④発酵玉ねぎ×発酵トマトの比較

発酵トマトは組織がしっかりしている感じがして、そのまま食べてみるとシュワシュワした酸味がした。乳酸菌がいるぞ。炒めていると生トマトに比べてなかなか崩れない。

味はというと、④の発酵玉ねぎ×発酵トマトがしょっぱくなりすぎて、③の味がよくわからなくなってしまった。

④は発酵×発酵なので、旨味は確かに強いかもしれない。ちょうどいい塩分になるように分量をうまいこと調節すれば旨いカレーに落ち着くのかなあ。

玉ねぎもトマトも3%の塩で発酵させたのに③の普通トマト×発酵トマトはあまりしょっぱくなってなかった。重量的には玉ねぎが230g、トマトが110gだったので単純に考えると塩分量は半分、あとはトマトは皮付きだったし、組織への塩分の入り込みやすさが玉ねぎの方が上回りそうなのでその辺りが原因だろうか。


結論と考察

・旨味のブースト目的で発酵玉ねぎと発酵トマトを使う意味はよくわからない。塩水につけた玉ねぎの火の通りは早くなるくらいで、そもそも乳酸菌を生きた状態で摂取したいのなら、そのまま加熱せずに食べた方が良いのではないか。

・乳酸発酵を促進させるために3%の塩水でつけるのだが、これはカレーのベースとして量を使う場合はかなりしょっぱい。もしカレーに使う場合は他の材料の量を増やすなど調整が必要だと思われる。

・発酵食品を使ったカレーとして酒粕や発酵アチャール、納豆を使うなどのアプローチが考えられる。酒粕を少量ダールに入れてみるのは、少々邪道かもしれないがミドルの旨味が補われる感じで結構おいしい。

・インド亜大陸の発酵食材は調べてみると意外とある。ネパールには納豆のダール(キネマ)もあるし。あとはタミルやスリランカ、バングラミャンマーなどにある発酵魚のカレーも調べてみたら面白そうだ。くさやのカレーは昔作ったことがあるが、くさかった。


以上、なんだかパッとしない結論になってしまった。 
フェヌグリーク納豆についてはnoteの方でまとめたいと思う。

カレー哲学|東京マサラ部|note
カレー哲学者/東京マサラ部代表/『カレーZINE』編集。東京マサラ部オンライン→カレーの哲学.com→

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